30.おんなのこ
【もしも もしも】
もしもオレがおんなだったら。
あのひとはオレにキスするのをためらわないのかな。
もしもオレがおんなだったら。
あのひとはもっと自然にオレに触れてくれるのかな。
もしもオレがおんなだったら。
あのひとはオレに「すき」だとか「あいしてる」と口にしてくれたかな。
考えてもどうしようもないけれど。
でも、もしもオレがおんなだったら・・・
「何キモいことを言ってんですか」
呆れたような声はあのひとから。
どうやら思ってたことが口に出てたみたい。
でも仕方ないじゃない。考えちゃったんだもん。
「ったく、いいですか?アンタが男だろうと女だろうとオレは変わりませんよ。今のまんまです。それにアンタだって変わらないんでしょう?」
・・・・何が?
「オレがどうしようもなくすきなこと」
きっぱりと言い切ったその顔は自信に満ちていて。
オレがおとこでもおんなでも、きっとこのひとをすきになる。
なんとなく、そう思ってしまった。