7.いいこいいこ
【dot】
そのとき、ひとりのさみしいこどもが
誰かの愛情を得る為に出来たことといえば。
いいこでいること。
いいこでいるために、いつも笑っていたあのこは
いつしか本当の笑い方を忘れてしまった。
いいこでいるために、いつも泣くのを堪えていたあのこは
いつしか泣けなくなっていた。
いいこでいたくて、いいこでいなくてはならなくて
我慢ばかりのこどもは
いつしか自分で感情を殺してしまった。
誰かに、愛されるために。
誰かに、必要とされるために。
そんなけなげで不器用な子供は大人となり
今は、オレの隣に。
いいこ いいこ
いとしいこ
欲しいものはオレが何でもあげるから。
だから、もう我慢する必要はないんだよ?
そう言って抱きしめたら、あのひとは何も言わず
ただ泣きそうに顔を歪めて笑っただけだった。